ヨーロピアンモダニズムが生んだ偉大なる芸術家 リュイス・マリエラ・イ・ロザス

輝かしい芸術家への経歴

img-1

リュイス・マリエラ・イ・ロザスは1872年、スペイン・バルセロナの著名な宝石職人、そして芸術家でもあるカタロニア人の一家の子として生まれました。

マリエラ家はリュイス・マリエラの祖父 ジョゼップ・マリエラ・イ・ヴィダルが宝石職人として工房を興し、父ジョゼップ・マリエラ・イ・マノヴェンスに引き継がれ、1888年にバルセロナ世界博覧会の宝飾部門でゴールドメダル賞を受賞するなど、当時様々なクラフト工房が存在するバルセロナの中で最も高いプレステージを持つ工房として名声を得ていました。

リュイス・マリエラはこうした恵まれた環境の中で宝石職人としての第一歩を記し、17歳の時、海外へ修行の旅に出ます。

彼はロンドンにおいて、金銀を使った装飾の技術を磨き、ジュネーブにおいて当時スペインではすでに廃れていた「リモージュ製法」と呼ばれるホーロー(七宝)の技術を身に付けました。そして同時に、後に彼を世界的に有名にすることになった半透明のホーロー(七宝)を作り出すための新しい技法により、バルセロナ七宝を開発します。

img-2 リュイス・マリエラ・イ・ロザスが生まれ育ち偉大なる芸術作品を生み出したバルセロナのグラシア通り。現在もこの一角に工房があり、左建物がショールームとなっています。 img-3マリエラは1888年バルセロナ世界博覧会の宝飾部門にてゴールドメダル賞を受賞

アールヌーボーへの傾倒、ルネ・ラリックとの出会い

img-4

パリに滞在中のリュイスは、19世紀の後半から欧米で大きな芸術スタイルの流れであるモダニズムやアール・ヌーボー様式に傾倒しました。そして、その代表といえるルネ・ラリックの作品に遭遇し、この出会いが後の彼の作品に多大なる影響を及ぼすこととなりました。

1900年パリ万国博覧会の閉幕とともにバルセロナに戻ったリュイスは、モダニズムの理想に燃え、マリエラの工房に残っていた彫金作品を溶かし去るとともに一時工房を閉鎖し、自分が編み出した新しいスタイルの作品づくりへの取り組みを始めました。こうして1901年12月21日の聖トーマス記念日(宝石職人達がその年の新作を発表する伝統的な日)に、世間の人々がそれまでに目にしたことのない全く新しい感覚の作品を発表しました。

トンボ、ニンフ、鳥、昆虫、植物などをモチーフとしたこれらの作品は、使われている貴金属の豊富さは言うに及ばず、溢れんばかりのエレガンスに満ち、一大センセーションを巻き起こしました。

バルセロナ、そして世界からの賞賛

img-5

この成功によりリュイスはバルセロナの宝飾界において最も高い名声を得るとともに、彼の作品はことごとく模倣の対象とされ、またこれを契機として国際的な賞を数多く受けることとなりました。

中でも1915年のアールヌーボーのメッカであるベルギーのゲーント博覧会における大賞の受賞は、世界的にマリエラの名声を不動のものとしました。リュイス・マリエラの活動は、彼と同じ時代を生きた著名な芸術家たちとの共同作業に特徴づけられるとともに、リュイス自身が風景画やポートレートのジャンルを得意とする著名な画家としても有名でした。

中でも1920年に制作した「日本の傘」は代表作に数えられ、現在バルセロナ現代美術館に所蔵されています。

また、リュイス・マリエラは戯曲家、そして舞台デザイナーとして演劇の世界にも深い関わりを持ち、彼がデザインした舞台セットは、1925年のパリ装飾芸術博覧会において大賞を受賞しています。

自然への崇拝、神秘的な作品

リュイス・マリエラの作品は構図や配置における自由奔放さ、非対称の尊重、円形や楕円形を活かすための直線の排除、あるいは動植物やニンフなどの姿にモチーフを見出すという自然への崇拝などといったモダニズム派の全般的な流れをその特徴としています。

モチーフとして動物界からは昆虫(トンボ、蛍、蝿、蝶など)、龍、蛇、猫あるいは海に棲む生き物などで、植物界からはアザミ、アサガオ、ユリ、はかない命を象徴する植物などです。また半透明の七宝の持ち味を活かすため、広げた鳥の翼や木の葉、あるいは花びらなどをモチーフとして積極的に採用しています。女性をモデルにしたフォルムはラファエル前派の流れの要素によって強調され、長い髪、微かな笑みを浮かべた横顔、手を伸ばした思い思いのポーズなど一種不可思議な魅力に溢れています。

そして作品としての最も大きな特徴はモダニズム派の建築様式に見られる多色装飾です。

宝飾用の宝石が持つ自然の色合いと、彼自身が開発したバルセロナ七宝の技術のみが再現し得る半透明七宝の微妙な色彩の調和が、彼の作品の生命です。

永遠不滅のマリエラの作品

リュイス・マリエラは宝飾品の分野だけでなく実に多くの作品を残しています。

1890年にサガスタ大統領に贈呈された、花をモチーフにした花瓶、宗教分野においては司教に献上された司教杖、数多くのカリス(ミサ用聖杯)、チボリウム(信者礼拝用聖体器)、モンストランス(聖体顕示台)などが彼の手によって製作されています。

また、カタロニアの君主たちがスペインのヴィクトリア女王に上呈した結婚式の王冠も手がけ、この王冠はカタロニア地方の最高傑作と称されています。

モダニズムの真正なる代表者として、広い分野に渡って多くの作品を残し、惜しみない賞賛を送られた宝飾クリエイター、そして芸術家のリュイス・マリエラは1958年、故郷バルセロナにおいて86年にわたるその生涯を終えました。

そして今日、リュイス・マリエラ自身が1914年に創設したマリエラ&カレーラ社によって、リュイス・マリエラ・イ・ロザスの残した歴史あるオリジナル作品が、往時と寸分違わぬ伝統技術で再現され、不滅の芸術作品として美と芸術を愛する多くの人々の心を魅了し続けています。

Page top